359人が本棚に入れています
本棚に追加
(やばっ、ぎりぎり間に合うと思ったのに初日から遅刻だよぉ。)
それもこれもあのエレベータの男が悪いと責任転嫁しながら5階端の企画制作部への道のりを急ぐ。
その間もちらちらと腕時計を確認すると、残り10秒。
ガラス張りのドアに張られた企画制作部のステッカーを確認するとそのまま勢いよく押し開けた。
「遅くなりまして申し訳ありません。本日より配属になりました鈴本美夜です。よろしくお願いしますっ」
がばっと勢いよくお辞儀をする。
ドサドサドサ。
硬く瞑った瞳をゆっくりと開いてみると見慣れたメイクポーチ。
新調したお弁当箱。
その他もろもろ。
へ?
おそるおそる顔を上げると、目が点になった社員の方々。
状況を把握する間もなく、フロアに笑い声が響いた。
-------------
「いやー、うん。今までで最高の自己紹介だったよ。うん。」
ぽんと肩を叩き未だに笑いが納まらないのか、時折くっくっと喉を鳴らしているのが2個上の木村一輝先輩。
「でも良かったじゃない。アノ部長が来る前で」
そう言ってフォローしてくれているのが1個上の吉川由羽先輩。
木村先輩は長身で髪は長すぎずワックスで固められた爽やかイケメン。
吉川先輩は緩やかなウエーブがかかった栗色の髪にぱっちりとした目が印象的な綺麗め美人。
そんな素敵な方々に囲まれてなおかつ叱責を逃れることができたのは、ツイているとしか言いようが無かった。
最初のコメントを投稿しよう!