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数歩前に出た所から元の場所へと戻るわずか数秒。
目が合ったかと思えば、不思議そうに見返され。
あの様子じゃ、ぶつかったのが俺だということも分かってないな。
普通、顔くらいは覚えているものじゃないのか。
そう思えば、気づかぬうちに眉間に皺が寄っていることに気づき。
一度中指でそっと押さえれば、木村の振進行で続く自己紹介に耳を傾けなおした。
「じゃあ、次は俺らが軽く自己紹介するね。俺と吉川は挨拶したから…野村課長お願いします」
課長の野村、そして関に続き順番に紹介が進んでいく。
「それでは、最後に部長お願いします」
その言葉に促され、輪になった社員を見渡す。
あいつもこちらへと向き直り、緊張しているのかと思えば食い入るような視線を感じ。
「…部長の篠宮だ。新入社員といえど仕事に甘えは許さない。後…」
…ようやく気づいたのか?
馬鹿が。
「前はよく見て歩け、チビ猫」
ようやく言えた文句の一つ。
そう言ってやれば、当のあいつは面食らったかのようにぽかんと口を開けている。
やっと合致したのか。
俺が幼馴染である事、そしてタックルまがいにぶち当たってきた事。
目をこれ以上ないくらい見開き真っ赤に染まる顔をみれば、答えは明白だった。
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