ミュータント②

第五十九章 存在理由

「エネルギーコンデンサーによるエネルギー循環…！」

　皇后炎蟲と化した花子デラックス蘭香娘蟲が驚きに満ちた声を上げる。先程、見たとは言ってもその光景は思わず目を疑ってしまう。

　どれ程のミュータントであろうと、自身のエネルギーの質量には限界があり、どれだけ心身を鍛え上げようともいずれは限界に突き当たる。だが、目の前の少年の技法は過去の先人達の努力を嘲笑うかの様に、あっさりとその限界を取り払ってしまったのだ。

「出鱈目な力を…！」

　皇帝雷蟲と化した太郎デラックス暴君童蟲が憤然とした声を上げる。

　愕然としている二体の姿を視認した歩は不敵な微笑みを口許に浮かべ、右手の掌を皇后炎蟲と化した花子デラックス蘭香娘蟲に、左手の掌を皇帝雷蟲と化した太郎デラックス暴君童蟲に向けてそれぞれ翳して見せた瞬間、その掌から白銀色の極太の熱線が迸る。

　白銀色の光を放つ膨大なまでのＡＳ粒子を放出して高濃度に圧縮され、ＡＳライフルの粒子ビームの比にもならない程の超極太の粒子ビームが放出されて、その身を鎧に包んだ少年と少女の二人の身体を呑み込んだ。

　大規模な爆発を発生させる暴力的なまでの白銀色の光芒から、辛うじて抜け出す事に成功した、皇后炎蟲と化した花子デラックス蘭香娘蟲と皇帝雷蟲と化した太郎デラックス暴君童蟲。流石に鎧で全身を纏っているとは言っても、全てのダメージを軽減出来ていると言う訳では無いらしく、重度のダメージを負っている様に見える。

「クソ、あんなの反則じゃねぇか…！」

　皇帝雷蟲と化した太郎デラックス暴君童蟲が、余りに圧倒的なまでの破壊力に憤った様に独りごちる。

「これが…阿修羅姫を得た者のアドバンテージだと言うのか…？　これが…第二世代のＡＳドライヴ適合者…」