第五十九章 存在理由

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   2  ゼロ・インフィニティと呼称されるエネルギーの無限循環。それによって莫大な力を得た月村歩は自身に急迫しようとする敵影を確認するなり、自分の後方に位置する阿修羅姫弓星石を見遣る。  敵もこの戦いに決着を付けるべく、本気で攻めて来る。ならば、歩も生半可な力で迎え撃っていては、確実に倒されてしまうだろう。そう判断した歩は阿修羅姫戦術の中でも中軸となり得る融合を選択する。 「弓星石、頼めるか?」 「大丈夫…。途中で倒れたりはしないから…」  弓星石は物静かな口調で応えて見せる。エネルギーコンデンサー能力によって、彼女もエネルギーを賄えるとは言えど、阿修羅姫の華奢な身体は莫大なエネルギーの総量に耐え切れず、多大な負担を肉体に強いる。  既に二度もエネルギー供給を行なっているせいで、彼女の身体はもう満身創痍だろう。見た限りでは何の変化も無さそうに見えるだろうが、それは単なる彼女の痩せ我慢に過ぎないのだ。 ―弓星石も限界か…。余り、のんびりとはやっていられないな…  歩はそんな思考を脳内で過ぎらせながらも、弓星石の身体を自分の方へと抱き寄せる。 「では、失礼を…」  一つ、断わりを入れると、弓星石は僅かに顔を赤く染め上げる。 「優しくお願いします…」  弓星石が懇願する様に言うと、普段自分は彼女に優しくないのだろうかと歩は考える。  歩は自分の唇を弓星石の唇と重ね合わせる。互いの唇の感触を楽しんでいるかの様にして、歩が双眸をうっすらと細めると、弓星石は思わず喘ぎ声を漏らして見せた瞬間、二人の身体が淡い黄緑色の光に包まれる。
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