第五十九章 存在理由

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「チッ…! だがよぉ…!」  皇帝雷蟲と化した太郎デラックス暴君童蟲は攻撃を防がれた事に憤りを覚えるが、瞬時にこれを好機だと判断する。攻撃にも防御にも転じられる武器を封じたのだから。 「こっちががら空きなんだよ…!」  そう叫ぶと同時に、皇帝雷蟲と化した太郎デラックス暴君童蟲は右腕から伸びる黄色の輝きを放つ蜂の針を突き出そうとするが、超越の弓を化した歩は右手から伸びる黄緑色の光を放つ鋭く伸びた爪でそれを受け止める。 「遅いな…」  超越の弓と化した歩は相手の意識の深層に刻み込むかの様にして言って見せると、即座に身体を反転させて臀部から伸びる黄緑色の光を放つ尻尾を鞭の様に撓らせて、愕然とした表情を浮かべていた皇帝雷蟲と化した太郎デラックス暴君童蟲の横っ面へと強かに叩き付ける。 「ぐぅっ…!」  皇帝雷蟲と化した太郎デラックス暴君童蟲が短い悲鳴を上げながらも吹き飛ばされる。そんな彼の無念を雪ぐ様にして超越の弓と化した歩へと突進して来るのは、皇后炎蟲と化した花子デラックス蘭香娘蟲だった。 「おのれ…!」 「遅い」  突進して来た彼女の背後へと回り込む超越の弓と化した歩は、黄緑色の光を放つ右手の指先から伸びる鋭い爪で皇后炎蟲と化した花子デラックス蘭香娘蟲の身体を薙ぎ払う。  本来ならズタズタに五体を引き裂いてやりたい所なのだが、彼女の纏う鎧の強度は途轍も無く硬い為にそれは敵わないと言うのが現状だった。  しかし、防御は途轍も無く高いと言うのに、その他の能力は随分とお粗末だった。いや、最初は高かった物が徐々に精彩さを欠き始めている様に思える。 「所詮は紛い物と言う事か…」
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