第五十九章 存在理由

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 皇后炎蟲と化した花子デラックス蘭香娘蟲はそこで一旦言葉を区切り、数拍の間を開けてから更に続けて言った。 「貴様等の基盤となった第一世代だ…! 革新者になれないと、ただセレスティアルに予測演算されただけで、彼等の人生は変わった…! 今まで持て囃すだけ持て囃されて、不要となったら捨てられるのだ…! あの方が…美麗様がどれだけ辛い思いをしたと…」 「その程度で辛いなんて思っている様じゃ、所詮奴等は革新者となれる器では無かった」  彼女の言葉を遮る様にして超越の弓と化した歩の冷ややかな言葉が投げ掛けられる。そんな彼の反応に驚き、皇后炎蟲と化した花子デラックス蘭香娘蟲はハッとした表情を浮かべ、目の前の少年の人の者とは思えない冷酷な瞳を見据える。 「革新者は世界の運命を背負って立ち続ける。その身に待っているのは責任と重圧、選択と決断。辛い等と言っている暇がある物か」 「貴様…! 実の兄や姉に対して…」 「なら、教えてやる。革新者となり得る者と、なり得ぬ者。その両者を隔てる高く分厚い、険しい壁をな。その身で味わって、奴等に伝えるが良い。その程度の辛さを乗り切れない様なら、所詮貴様等はそこまでだとな…」  超越の弓と化した歩は心の底から不敵な微笑みを浮かべて言って見せると、そんな彼の黄緑色に染まった瞳に電子文字が浮かび上がる。三位一体の力を発揮出来るASドライヴの内蔵システム『TRINITY―SYSTEM』の発動条件を満たした証。 「TRINITY―SYSTEM」  超越の弓と化した歩の言葉に呼応するかの様にして、彼の全身から白銀色と黄緑色の光を放つAS粒子が散布される。その粒子の散布量は奔流であり、激流であった。  膨大なまでの質量のAS粒子は周囲の光景を光で埋め尽くし、その場にいた者達全員を光の世界へと導いた。
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