ミュータント②

第五十九章 存在理由

　光の世界を作り出す程の圧倒的なまでのＡＳ粒子の質量は歩の脳の情報処理能力を飛躍的に上昇し、精神感能力すらも飛躍的に高める事となる。

『あら、今日は随分と働かせるのね…』

『良いじゃないか、僕は暴れたいね…』

　超越の弓と化した歩の黄緑色の左目の瞳の虹彩が漆黒色に、黄緑色の右目の瞳の虹彩が純白色にそれぞれ染まり上がる。それと同時に、彼の左右の両側に二人の少女が姿を現わした。しかし、その少女達の身体は全体的に色素が薄く、彼女の身体越しに向こう側の景色を覗く事が出来る。

　地面に届きそうな程に艶のある長い漆黒色の髪に漆黒色の虹彩を持つ瞳、雪の様に真っ白な肌に清楚で大人びた美しい顔立ちと容姿、その身に真っ白な着物を纏った少女。

　出雲を統治する神族のミュータントの女性にして、空間制御能力と時間跳躍能力の特殊能力を持っている常盤。

　短い艶のある純白色の髪に純白色の虹彩を持つ瞳、雪の様に白く透き通った肌に中性的な綺麗な顔立ちと容姿、その身に真っ黒な着物を纏った少女。

　厳島を統治する神族のミュータントの女性にして、万象変化能力と因果切断能力の特殊能力を持っている森羅。

　四大貴族の特殊な技法によって歩の肉体に定着させた、二柱の神族の魂。彼女等の力と阿修羅姫の力、もしくは阿修羅姫の力と阿修羅姫に準ずる存在の力を同時に行使する事こそが『ＴＲＩＮＩＴＹ―ＳＹＳＴＥＭ』の本質なのである。

―何だ、あれは…？

　皇帝雷蟲と化した太郎デラックス暴君童蟲が愕然とした表情を浮かべて、目の前の光景を疑ってしまった。

―あの輝きは、あの時の…

　皇后炎蟲と化した花子デラックス蘭香娘蟲が危機感を覚えて唖然とする。