第五十九章 存在理由

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   1  彼女は笑顔で振る舞っていたけれど、私達から見える彼女の表情はとても悲しげだった。そんな彼女の憂いを払いたいと心の底から思った。どんな事をしてでも。  通常の次元とは隔離された空間に、四大貴族と守護二家の管理する孤島が存在する。そこではASドライヴ搭載者候補である現役時代の第一世代と第二世代の異なる時代の英雄達が、狩猟遊戯と言う名のゲームで激闘を繰り広げている。  そのある地点では第二世代のASドライヴ搭載者候補の少年と、現役時代の第一世代のASドライヴ搭載者候補の一人がその驚異的な技術力で作り出してしまった、あらゆるミュータントのデータと少女型オートマトンの阿修羅姫の特殊能力を基に構成された、ASドライヴを搭載した生命体との戦闘が佳境に入っていた。  第二世代のASドライヴ搭載者候補の少年は、艶のある少し長めの白銀の髪に月光の様にぎらついた白銀の虹彩を持つ瞳、雪の様に白く透き通った肌に女性の様に綺麗な顔立ち、その身に膝まで丈のある漆黒のロングコートを纏っていた。  彼の名前は月村歩。私立御巫学園中等部三年一組に通う男子生徒で、ミュータント管理局に務める管理局近衛兵の一人だ。更には、四大貴族の一家の頂点である月村家の御曹司で、白銀の死神と言う異名を付けられる程の実力の持ち主だ。  歩の特殊能力は主に二つ。阿修羅姫と呼ばれる少女型オートマトンを具現化し、融合して戦闘能力を借り受ける能力と、体内に搭載された特殊基幹ASドライヴから精製されるAS粒子を駆使する能力の二つだ。 ―先程のシステム持続時間は二三分って所…。なら、ただでさえ消耗の激しい状態六発動時では、何分…いや、何秒持つのやら…
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