第五十九章 存在理由

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「見掛け倒しだろうが…!」  皇帝雷蟲と化した太郎デラックス暴君童蟲は鋭く叫びながらも、超越の弓と化した歩へと突進しようとするが、その時には既に彼の視界から少年の姿が消え去っていた。 「なっ…!?」  次の瞬間には、皇帝雷蟲と化した太郎デラックス暴君童蟲の腰部に激痛が走り、その直後に視界が反転してしまう。  逆さまになった彼の視界で捉えた物は、超越の弓と化した歩の姿だった。右手に美しい装飾が施された純白色の日本刀を携えた彼は、振り抜いた凶刃によって皇帝雷蟲と化した太郎デラックス暴君童蟲の身体は上半身と下半身を真っ二つに切り裂いていたのだ。  因果切断能力と万象変化能力を操る森羅の肉体を用いて作られた御剣の作品である純白色の日本刀、森羅刀剣は万象と因果を両断する。どれだけ強固な鎧だろうと、阿修羅姫が有する再生能力だろうと、容赦無く両断する。 「カッ…!?」  皇帝雷蟲と化した太郎デラックス暴君童蟲が余りに突然な事によって、驚きと痛みで掠れた声を上げてしまう。 「太郎…!」  地面に伏せる番いを目にして、皇后炎蟲と化した花子デラックス蘭香娘蟲が駆け寄ろうとするが、その行為は余りにも愚かだったと後悔する事になる。  彼女は逃げるべきだったのだ。余りに実力が隔たっている敵から仲間を救おうとするのでは無く、一刻も早く逃げるべきだった。だが、所詮それも詮無い事だ。空間制御能力と時間跳躍能力を持った常盤の力を行使出来る、超越の弓と化した歩には距離や時間と言う概念など無意味なのだから。 「優しい限りだな。仲間を助けたいのなら、もっと腕を磨くべきだが」  皇后炎蟲と化した花子デラックス蘭香娘蟲の背後に回った、超越の弓と化した歩は呟く。
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