第五十九章 存在理由

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   3  先程から脳に走る鋭い頭痛が絶えない。目が回っている様に気分が悪い。量子演算型コンピューターセレスティアルは人間の情報処理能力はおろか、スーパーコンピューターの情報処理能力の比では無い。そんな物と長時間リンクしていると言うのは、自身の脳に多大なる負担を強いる。  余りに膨大な情報量を直接脳に叩き込まれたのが原因だと言う事は分かっている。セレスティアルは多大なる情報を与えてくれはするが、それを処理してくれる能力までは与えてくれないし、与えられる情報を送り戻す事も出来ないから、今まで戦闘での使用は極力避けて来たと言うのに。 ―頭痛い…。気持ち悪い…。倦怠感酷い…  月村歩は石製の建造物の瓦礫の上に腰掛け、酷く痛む頭を抱えて顔を俯かせていた。 ―クソ…。セレスティアルなんかと直接リンクするんじゃ無かった…  歩は後悔の念で自己嫌悪してしまう。今のままでは余りに頭痛と吐き気が酷くて、まともに特殊能力を発動出来そうにも無いし、まともに身動きする事も無理そうだ。 ―セレスティアルも何とかならん物かな…  歩は小さく溜め息を吐いてしまった。量子演算型コンピューターはあらゆるコンピューターと一方的にリンクしている為、ありとあらゆる情報を知る事が出来る。それはシステムの名称を持つ超人の標も例外では無く、それに記載された情報も知る事が出来る。  先程の戦闘で、歩はあの二体の情報を得ようとして、セレスティアルを通じて超人の標ともリンクしたのだが、今では少しそれを後悔している。あくまで、彼等の性能だけを知るつもりだったのだが、彼等の出生や経緯を全て網羅してしまった。覗き見をしている様で趣味が良いとは言えなかった。
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