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「ん…?」
意識を取り戻したかの様にして流華が目を開き、鮮血を彷彿とさせる血の様に赤々とした虹彩を放つ瞳に切れ長の目を露わにする。
流華はゆっくりと起き上がって、寝惚け眼で辺りを見つめる。そして、自分が裸体を晒している事と、目の前に歩の姿がある事に気付くと、見る見る内に顔を真っ赤に染め上げて、可愛らしい甲高い悲鳴を上げた直後、その場から急いで後退りして、石製の建造物の瓦礫の影に隠れてしまう。
歩としては少し残念な気もするが、女の子らしいまともな反応をしてくれる事にホッとした。いくら、再生能力で肉体の損傷を修復出来るとは言え、脳が何の障害も無しに再生してくれると言う確証はどこにも無かった。
だからこそ、流華の少女としての正常な反応は歩の杞憂を晴らしてくれたのだが、流華本人に取っては多大なる羞恥心を抱かせてしまった様だった。
「歩君…!? 何で…!?」
流華が石製の建造物の瓦礫からひょっこりと頭を出して、疑問に満ちた口調で声を張り上げる。
「取り敢えず、これを羽織っておけ…。それと、声のボリュームを少し下げろ…。頭が痛いんだ…」
歩はどこか不機嫌そうに唸りながらも、手にしていた漆黒のロングコートを流華へと放り投げる。
常盤織髪の量産型も自分のとデザインを変えずに、膝まで丈のある漆黒のロングコートにしておいて正解だった。もうちょっと丈が短かったのなら、色々と目のやり場に困る所だった。ただでさえ、流華は四大貴族の女性陣や阿修羅姫にも勝る抜群のプロポーションを誇っているのだから。
うー、と言う羞恥に満ちた声を上げながら、流華はいそいそと漆黒のロングコートを羽織って行く。
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