第五十九章 存在理由

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 歩は脳内でそんな思考を過ぎらせながらも、目の前に対峙する二体の敵の姿を見据える。  一人は、頭の後ろで一つに纏められた編み目の緩い三つ編みの艶のある白銀の髪に、月光の様にぎらついた白銀の虹彩を持つ瞳、雪の様に白く透き通った肌の所々に虫の様な文様が刻み込まれ、見る者全てを魅了してしまいそうな程に見目美しい顔立ちと容姿、その身に様々な種類の虫を彷彿とさせる赤色の鎧に身を包んだ少女。  彼女は花子デラックスと呼ばれる人型の巨大な虫の生命体の完全体である、蘭香娘蟲と呼ばれる形態。  本来の花子デラックス蘭香娘蟲の身体を包むのはどす黒い鎧なのだが、その鎧は赤色に染め上げられている。今の彼女の状態は皇后炎蟲と呼ばれる物であり、歩の使役する少女型オートマトン阿修羅姫の一体、炎を操る阿修羅姫火星石の力を基盤にした物を発現させた物なのだ。  もう一人は、腰まで伸びた艶のある白銀の髪に月光の様にぎらついた白銀の虹彩を持つ瞳、雪の様に白く透き通った肌の所々に虫の様な文様が刻み込まれ、見る者全てを魅了してしまいそうな程に見目美しい顔立ちと容姿、その身に様々な種類の虫を彷彿とさせるどす黒い鎧に身を包んだ少年。  彼は太郎デラックスと呼ばれる人型の巨大な虫の生命体の完全体である、暴君童蟲と呼ばれる形態である。  本来の太郎デラックス暴君童蟲の身体を包むのはどす黒い鎧なのだが、その鎧は黄色に染め上げられている。今の彼の状態は皇帝雷蟲と呼ばれる物であり、歩の使役する少女型オートマトン阿修羅姫の一体、雷を操る阿修羅姫雷星石の力を基盤にした物を発現させた物なのだ。  歩は二体の身体を包み込む鎧の強度のせいで、大きなダメージを与えるまでに至らないでいる。しかし、その打開策を見い出した。
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