第五十九章 存在理由

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―流石に回避もしんどいな…  歩は自分の身体の各所に宿る黄色の光を放つ雷のエネルギーに視線を遣って、心の中で呟いた。  自身の身体に宿る雷のエネルギー。皇帝雷蟲と化した太郎デラックス暴君童蟲の腕から伸びる蜂の針の作用による物で、攻撃を受けた身体の部位にエネルギーを貯蔵して、そこに再び攻撃を当てる事でエネルギーを炸裂させ、確実に死に至らしめる。言うなれば、二撃必殺。  皇后炎蟲と化した花子デラックス蘭香娘蟲の一撃必殺級の攻撃も警戒しなければならないが、皇帝雷蟲と化した太郎デラックス暴君童蟲の二撃必殺の攻撃にも警戒を割かねばならないと言うのは歩に大分精神的疲労を強いらせる。 「火切!」  皇后炎蟲と化した花子デラックス蘭香娘蟲が赤色に染まった蟷螂の鎌を光速で振り抜く。  その刀身部から放たれた赤色の輝きを放つ斬撃は歩目掛けて凄まじい速度で急迫するが、彼とリンクしている量子演算型コンピューターはそれを予測演算しており、回避する事はそこまで困難では無い。  標的を失った赤色の輝きを放つ斬撃は石製の建造物を真っ二つに切り裂き、その切断面から激しく発火して燃え上がる。 「雷貫!」  皇帝雷蟲と化した太郎デラックス暴君童蟲が右腕から伸びる黄色の輝きを放つ蜂の針を歩目掛けて突き出すが、歩はそれを身を翻して回避するなり、カウンター気味に彼の顔面に強烈な蹴りを叩き込む。 ―このままじゃ、長くはもたないな…  ただでさえ自分は肉体面に短所があると言うのに、長時間の白兵戦を続ければ、いずれボロが出る。それを自覚していた歩は、自分よりも後方で援護に徹してくれている僚友の力を頼りにした。
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