第五十九章 存在理由

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 その想いが通じてか、追撃を仕掛けるべく距離を詰めようとした皇后炎蟲と化した花子デラックス蘭香娘蟲に、黄緑色の光を放つ無数の矢が降り注いだ。 「くっ…!」  彼女は咄嗟に自分に向かって降り注ぐ矢の雨を回避するべく後方へと跳躍して、矢の射出元を鋭い双眸で睨み付ける。  皇后炎蟲と化した花子デラックス蘭香娘蟲の視線の先にいたのは、見目美しい一人の少女だった。  艶のある短い黄緑色の髪に黄緑色の虹彩を持つ瞳、雪の様に白く透き通った肌に凛々しくも美しく整った顔立ちとスラリと伸びた背丈にスレンダーな体格、民族衣装の様なヒラヒラとした黄緑色の服を着て、その手に黄緑色のアーチェリー型の弓を持った少女。  彼女の名は阿修羅姫弓星石。月村歩の特殊能力で具現化された少女型のオートマトンで、弓矢を自在に操る特殊能力を持っている。 「阿修羅姫…」  皇后炎蟲と化した花子デラックス蘭香娘蟲が恨めしそうな口調で呟くと、そんな彼女に白銀色の光を放つAS粒子を高濃度に圧縮したASライフルの粒子ビームが急迫する。 「チッ…」  赤色に染まった蟷螂の鎌を振り抜いて白銀色の粒子ビームを掻き消し、皇后炎蟲と化した花子デラックス蘭香娘蟲は自分に向けて粒子ビームを放った歩の姿を睨み付ける。  オリジナルASドライヴ搭載者であるミュータントと、それに使役される少女型オートマトンの阿修羅姫による連携は絶大な物だと、彼女は過去に聞かされた事があるが、まさかこれ程なまでに苦虫を噛む事になろうとは思いもしなかった。  彼等二人の連携を崩そうにも、この二人は精神による対話を可能としている為に、そればかりは流石に実現は叶いそうにない。 「この…!」
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