第五十九章 存在理由

8/51
前へ
/3000ページ
次へ
「ぐあぁぁぁっ…!」  間断無く降り注ぐ連続攻撃に、皇帝雷蟲と化した太郎デラックス暴君童蟲が苦悶に満ちた叫びを上げる。 「馬鹿者…! 相手の力を鑑みずに無闇に突っ込むからだ…!」  自らの番いである者の愚かさに怒りを感じながらも、皇后炎蟲と化した花子デラックス蘭香娘蟲が歩の背後から接近しようと試みる。  すると、彼女の接近をセレスティアルの戦術バックアップで察知していた歩は何の前触れも無くゆっくりと振り返った。 「…ッ!?」  予想外なまでの歩の反応の速さに、皇后炎蟲と化した花子デラックス蘭香娘蟲の驚きは最高潮に達した様に、その目を大きく見開いてしまった。 「俺の力…? 見たいか…?」  歩が不敵な微笑みを浮かべながら、挑発的な口調で尋ねる。 「何…?」  皇后炎蟲と化した花子デラックス蘭香娘蟲は茫然とした表情を浮かべて、眼前で繰り広げられる光景に目を奪われる。 ―しまった…!  彼女の脳裏に失念していたある情報が蘇り、それを完全に思い出していた時にはもう手遅れだった。 「ハアァァァァッ…!」  歩は自らを鼓舞するかの様な雄々しさを感じさせる掛け声を上げて、自身の精神を昂ぶらせる。それに呼応する様に彼の身体が白銀色の輝きを放つと光の帯となって弓星石の身体へと注がれ、弓星石の身体から放たれる黄緑色の輝きが光の帯となって弓華の身体へと注がれ、弓華の身体から放たれる黄緑色の輝きが光の帯となって歩の身体へと注がれる。  その光の軌跡が歩、弓星石、弓華、歩と順々に循環し、空中に白銀色と黄緑色の光の軌跡で∞のマークが描かれる。
/3000ページ

最初のコメントを投稿しよう!

206人が本棚に入れています
本棚に追加