第五十九章 存在理由

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 サーヴァント契約で生み出されるサーヴァントには、そのどれもが共通の体質を持っている。契約者である人間から得た生命力を自らの体内で何倍にも増幅させ、契約者であるミュータントへと供給する。その契約者のミュータントは、何倍にも増幅されたエネルギーを駆使して強大な特殊能力を行使する。  しかし、その力の通り道はあくまでも一方通行だ。サーヴァントからミュータントに注がれた莫大なエネルギーは、ミュータントの特殊能力の発動で消費され、契約者である人間へと戻る事は無い。  それに、契約者である人間には自身の力の度量に限界がある。その限界を超えてしまえば、その人間は死に至る。  弓星石が契約者の人間としての役割を果たしているのであれば、歩から彼女にエネルギーが戻る事は無く、エネルギーを放出し続ければ、弓星石はいずれ力尽きるはずなのに、彼女は平然と力の放出を続けている。  弓星石はオートマトンとしての一面も持っている。オートマトンは主であるミュータントから力の供給を受け、その力を行使出来る。つまり、主に無限の力があれば、オートマトンの活動時間は無限大になる。  弓星石が弓華に全てのエネルギーを分け与え、弓華が得たエネルギーを体内で何倍にも増幅させて歩に全て分け与え、歩はその力の全てを弓星石へと還元させる。エネルギーは彼等の間で何度も何度も循環し、無限に膨れ上がる。  虚無と無限を繰り返すその技法は、まさに阿修羅姫を使役する歩のみに許されし力。  ゼロ・インフィニティ。  そう呼称するに相応しい物があった。  虚無と無限を繰り返す事で莫大なエネルギーを手に入れた歩は、体内に搭載された特殊基幹のASドライヴの活動を活性化させ、粒子生産量を飛躍的に上昇させ、特殊能力の発動に必要なエネルギーを無限に確保する。
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