番外編0.6 悲痛の刃

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 歩はそっと声の主に振り返ると、そこにはスーツ姿の三人の男が立っていた。  彼等の姿を見て、月村家の嫡子は何かを察したかの様に、表情をハッとさせる。 「管理局の工作員か…」  白銀の死神と謳われたミュータントの少年が確認する様に言うと、男達はコクリと首肯して見せた。  ミュータント管理局に所属する工作員。戦闘行為などは出来ないが、主にミュータントの情報を隠匿する為の作業を極秘裏に行なう諜報工作員である。 「ハイ。そちらが、通報にあった民間人を虐殺したミュータントですか」 「既に死んでおられる様ですが、月村副隊長がやったのですか?」  工作員の疑問に応えるかの様にして、歩は無言で頷いた。 「彼女の遺体をどうする気だ?」 「こちらで回収する事になりますが」  工作員の返答を聞いて、月村家の嫡子は僅かに険しい表情を浮かべてから、工作員達へと向き直る。 「彼女の遺体には触れるな」  白銀の死神と謳われたミュータントの少年が鋭い口調で言い放つので、工作員達は僅かに動揺した様な表情を浮かべて、互いの顔を見合ってしまう。 「しかし、我々としてもミュータントの遺体を放置する訳には…」  工作員の物言いには正当性はあるし、尤もだと思うが、歩としては引く訳にも行かない。  それ故に、月村家の嫡子は力尽くで訴える事にした。  右手の掌から、琥珀色の光を放つ小さな浮遊球体を出現させる。その光が弾ける様にして消え去ると、代わりに現われたのは琥珀色の髪と瞳を持つ阿修羅姫だった。  幻覚の特殊能力を操る力を持つ阿修羅姫妖星石。

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