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ユチョンは家に着くとタオルで丁寧に猫を拭いてやった。
「ほら、綺麗になったぞ」
そう言って頭を撫でると、ありがとうというように、にゃぁ~と鳴いた。
買い物袋をダイニングテーブルの上に置いて、冷蔵庫の影から畳んであったダンボール箱を取り出し組み立てると、ビニールをしいてから新聞紙をしいて、
「ほら、これがトイレだぞ。頼むからここでしてくれよ」
そう言って洗面所の隅に箱を置いた。猫はまた一声鳴くと、ユチョンの後ろをついて歩く。
「これじゃ猫じゃなくて金魚のフンだよ、、、」
足もとの猫に腕組みをして言うと、話しが解ったのかリビングへ歩いて行きソファの上で丸くなる。それでも目はユチョンの動きを追っていた。ワンルームのさほど広くない部屋は丁度猫のいるソファから総て見渡すことができて、安心したのかしばらくすると両足の上に頭を乗せて目を閉じた。
ユチョンはダイニングテーブルでビールを開けて、ノートパソコンを叩きながら次の働き口について考える。歌手になる夢を捨てたわけじゃなかったが、路上ライブだけじゃ食べていけないのも現実で、たまたまスカウトされたホテルのクラブのピアノマンをだらだらと3年も続けてしまった。その間も曲を作りためてはいたが、そうそう納得のいく曲ができるわけもなく、また聞いてくれる相手もいない。
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