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彼はなかなか人間であることに慣れなくて、あちこちにぶつかって歩いては青あざをつくっていた。 まだ春先で寒いからとパーカーを着せても直ぐに脱いでしまい、ジーンズにタンクトップでごろごろと過ごす。 なによりも困るのが俺にまとわりつくことで、俺の後をついて歩き膝の上に乗ろうとする。猫の習性なのだろう何度言って聞かせても直りそうになかった。可愛い猫にならまだ知らず、自分と同じ身長のそれも男にベタベタされるのはなかなか慣れることができなくてその度に、うわぁとか、おおっとか、声をあげて彼を驚かせることになる。 そんなときの彼は悲しそうに遠巻きに俺を見ているが、しばらくするとまた忘れてまとわりついてくるのだ。
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