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夜も更けて煌びやかなネオンが灯る眠らない街。
明かりがちらほら灯る高層ビルの上にそびえ立つのは一つの影。
「ここが東京ねぇ…」
そう呟く人影がビルの上からネオンが灯る街を見下ろす。
車のクラクションの音が鳴り響き
その光がいくつも無数に通り過ぎていく。
「…五月蝿い街」
そう感想を述べて
手にしていた携帯のディスプレイに表示されていたのは新着メールを知らせる画面。
「あの御方からかな?」
メールを開くと
それは見慣れたいつもの無機質な文字の羅列が表示されていた。
『必ず、名も無い花を見つけたまえ』
「………あの御方らしい」
くつり、と。
淡々と無表情で喋る姿を思い出して笑みを浮かべて携帯をしまう。
「さてと、この東京のどこかに居る名も無い花事、花姫様を探しに行くとしますか」
トン、と。
ビルからジャンプすると落ちる感覚が何とも心地良い。
『おいで、シルビア』
そう呟くと人影の前に現れたのは大きな鳥。
人影はその鳥の背に軽やかに着地するとシルビアと呼ばれた鳥は速度を上げて上空へと羽ばたいていく。
「必ず、花姫様をあの御方の元に」
ひらりと上空に舞う羽根。
それは天使の祝福か
あるいは悪魔の導きか
それは今の時点ではまだ誰も知らない。
長き眠りについていた小さな小さな種が目を覚ましてゆっくりと芽を出し始めたのと同じ様に。
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