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それは正に一瞬の出来事であった。
スカイブルーの瞳が間近に見えたのと同時に膝に乗せていた弁当が音を立ててひっくり返ったのだ。
(え………?)
皐月の視界には一面の青空が広がる。
そして皐月に覆い被さっているのは同じ青空の色の瞳を持つ見ず知らずの男もとい同じ学校の生徒。
「あ…あの…」
この状況に戸惑いを隠せないが
ジッとこちらを見下ろしている男に皐月は視線を反らしながらも
「…俺、男なんですけど」
「知っている」
それはもうあっさりと
男は当然の様に答えた。
そして次の瞬間。
男の手は皐月の制服のネクタイに手を伸ばしてネクタイを緩めるとカッターシャツの上ボタンを1つだけ外して首筋に唇で触れてきた。
「なっ!ちょっ…!」
男の行動に驚きを隠せない。
首筋に吐息や舌の感触まで直に伝わって気持ち悪くて堪らない。
(まさかの、貞操危機!?)
自分に突如降りかかった身の危険に身体をよじらせて抵抗をするが男の力の方が遥かに上で動く事も儘にならない。
首筋に伝わる強く吸われる感覚。
それだけでゾクリと背筋が凍った。
(初対面で見ず知らずの男にいきなり押し倒されてこんな事されるなんて)
何て厄日だと思っていると
「…この感じは…。やっぱりお前なんだな。俺がずっとずっと探し続けていた花…」
意味不明な事を言い続ける男に流石にいつまでもやられっぱなしでいるわけにはいかない。
「おい、何が何だか知らないが人を勝手に押し倒した挙げ句強姦紛いな事しやがって!俺は女でも花とかそんなんじゃねぇよ!」
「いや、花だ。お前は俺の花だよ」
(…コイツ、やばい)
男の表情に背筋が凍った。
こちらの話が全く通じていない。
男の完全な一方通行のやり取りだ。
「怖がらなくても大丈夫だよ。直ぐにお前の花を咲かせてやるから」
首筋に髪が触れてくすぐったさを感じたのと同時に唇の感触が伝わる。
それが鎖骨にまで移動して吸われた感覚と舌の感触まで伝わってきた。
「…だから、やめっ…!」
ビクリと反応した瞬間。
「くおぅらぁぁぁぁぁぁぁぁー!!」
そんな叫び声が聞こえたのと同時に皐月を押し倒していた男の姿が風の様に消えた。
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