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どんどんどんっ。
重たい丸木のドアが叩かれた。
出たくない、誰にも会いたくない…が、出ないと。
テトは閂を抜いた。
「また、一日ぼーっとしてたの。あんた本当にルオおじさんの甥なの?おじさんは働き者なのにねぇ、やだわぁ。」
…うるさいっ、うるさいっ、うるさいっ。
ミア、何かにつけてテトに当たり散らす隣の家の娘だ。
「まあ、ミア。そんなこと言わないで…テトさん、おじさんは?」
ティア、隣の隣の家の娘。
何だか良い匂いがする…
俺から逃げ去った女もこんな匂いだった。
「テトっ、あんた何ぼーっとしてるの?口まで動かなくなったの?」
ミアがうるさくまくしたてる。
「…おじさんは、旅商の世話で、家を、空けてる。もうすぐ…帰る。」
テトの口はあまりに使わないためにうまくまわらなくなっていた。
「もうすぐっていつよ?いつ?いつ?ティアが急ぎの用があるのよ、あんた迎えに行ってよ!!」
ティア、の用事?
だけど俺にできるのか…
テトは悩んだ。
「何よ、あんたティアには世話になってるでしょ?そんくらいできないの?」
「や、やるよ。」
了承してしまった。
「テトさん大丈夫?外は吹雪だし、何より…。」
ティアが何を言いたいのかはよくわかる、だが何だかティアの顔を見ているとなんだか気力がわいてきた。
「西の頂まで…なら、道も、平坦だし…何とか、車椅子でも、登れる、心配…するな。」
テトはティアへ微笑んだ。
「ところで…ティアの用ってな…」
「あんたには関係ないでしょ、早く行きなさいよ!!」
テトはミアを睨み付けたがミアは睨み返してきた。
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