3人が本棚に入れています
本棚に追加
私は、真っ暗な展望台で彼を待っていた。
今日は、初めての彼とデートだ。
彼は、私見せたい物があるから、この展望台で待ってて欲しいと言った。
待ち合わせから、10分経った頃、展望台から街路樹に続く坂道の方から
――キコ、キコ
―はぁ、はぁ、はぁ
という音が聴こえてきた。
―彼が来た
私はそう思った。
その予想は的中して
「ごめんね。待たせたかい?」
と、彼が現れた。
彼は、私立高校の制服に、白いセーターを着て、最近流行りのポップコーンを片手に、三輪車に乗って現れた。
「いいえ、大丈夫です」
私はそう答えた。
初めてのデートって事もあり、恥ずかしくて、顔が熱い。
「食べるかい?」
彼は、ポップコーンを差し出した。
「ありがとうございます」
ポップコーンは、少し冷めていたが、口に入れたとたん、甘い香りが広がった。
「僕は、メイプルシロップ味が大好きなんだ」
彼は、三輪車に跨ったまま、子供の様な笑顔で微笑んだ。
―やっぱり、カッコいい。
私はこの笑顔が大好きだ。
この笑顔を見ていると、凄く幸せな気分になる。
「あ、そういえば、見せたい物ってなんですか?」
そう訪ねると彼は、腕時計を見て
「もうそろそろだ。ほら、空を見てご覧」
私は、彼にそう言われ、空を見上げた。
―――あっ!
一瞬空に、一筋の光が走った。
「今のって、流れ星?」
「そうだよ。でも、少し違うかな―――ほら、また」
もう一回空を見上げると、一筋、二筋、三筋…しまいには、数え切れない位の星が、流れては消えていった。
私は、その光景に感動して、涙を零した。
最初のコメントを投稿しよう!