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「只今、接近している台風12号は徐々に勢力を増し、今日の夕」
――ブチ
俺はテレビの電源を落とした。
不愉快でしょうがなかったからだ。
今日は、仲間で集まって、花火をする予定だった。
夏休み最後の思い出作りにだ。
だが、その計画も、台風のお陰で台無しになった。
「クソっ!」
俺はムシャクシャして、空気イスを始めた。
これは、ガキの頃からの癖で、イライラしたりすると、ついやってしまうのだ。
一時間位空気イスをやっていると
――コンコン
と、台風の風に紛れて窓を叩く音が聞こえてきた。
「なんだ?」
窓を開けると、いきなり石が飛んできて、俺の顔に当たった。
「痛!誰だっ!」
苛立ちをぶつける様に叫ぶと、下に雨合羽を着た仲間たちが、笑顔で手を振っていた。
「おーい、中入れろよ!」
仲間の一人が叫んだ。
俺は急いで、玄関に行き、ドアを開けた。
ドアは強風に押されかなり重かった。
ドアを開けた瞬間大量の雨と共に、仲間が流れ込んできた。
「うっひゃー。すげー雨」
「どうしたんだよお前ら?」
そう聞くと仲間達は照れくさそうに言った。
「だって、お前家で独りだろ?」
「独りじゃ寂しいかなっ?って、思って来ちゃいました」
「さ、寂しくなんかねーよ」
俺は、そっぽを向いて、ぶっきらぼうに答えた。
ホントは嬉しくて少し涙目になっていた。
「あれ?あれ?もしかして、泣いちゃってます?」
仲間達はニヤニヤしながら言ってきた。
「泣いてねーし!それと、ニヤニヤしてんじゃねー!」
俺はそういうと、笑えてきた。
仲間達も、笑い出し、腹を抱え始めた。
そして、俺達は夜通しで騒いだ。
それはもう、台風なんかに負けない位に。
小腹が空いたら、女の子数人が夜食を作ってくれた。
見た目も味も、微妙だったが、なぜか今まで食べた物の中で一番美味しく感じられた。
台風に荒らされた、夏休み最終日
俺にとっては、最高の思い出になった。
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