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…時は西暦2010年
近未来と言われていた21世紀に突入し、早10年
いまだネコ型ロボットは存在しないし、空飛ぶ船も町中を駆け回ってはないけれど、
お掃除ロボットは家電量販店に並んでいるし
体重移動だけで進む乗り物はたまに見かけるし
確実に科学は進歩していっているのを実感する
しかしそんな時代になっても変わらないもの
それは、…「恋愛」
男と女が存在する限り、太古から続く苦悩の渦は
永遠と人々を喜怒哀楽の忌々しい世界へいざない続ける…
「…のである…」
「…ねぇ、さっきから、何ブツブツ言ってんの?」
ここは相変わらず無機質なコンクリート造りで、もっとも基本的な文明の利器である冷暖房すら満足に備わっていない県立高校の教室
まだまだ暑さの残る秋の日の夕暮れ、全開の窓からは、昼間よりも熱くて眩しいオレンジ色の西日が差しこむ
もう部活も終わってみんないそいそと帰宅し、学校らしいにぎやかさは微塵もない
そんな2年2組の教室にいるのは、ブツブツと独り言を呟く川野優奈(かわのゆうな)と、呆れ顔の木ノ下瞬(きのしたしゅん)の二人だけ
優奈は教室前方の扉にもたれかかり、瞬は後方の扉の前にうずくまり、
互いに前方の窓の外をボーっと見ていた
「「はぁ~…」」
ふたり同時に溜息をつき、顔を見合わせる
「どしたー?」
「…木ノ下くんこそ」
「…俺は、別にー。」
そうボソリと呟きを交わして、またはぁ~と溜息をつき
ボーっと窓の外に目を向けた
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