1 フラれた二人はライバル、同志

3/7
前へ
/7ページ
次へ
夕日が威力をなくしていくのはあっという間で、空は紫から藍色に染まりつつ、 開け放たれた窓からは少しひんやりとする風が吹き込み始める 「…」 「…川野?」 すっかりうす暗くなってもうお互いの顔もわからなくなった頃、微かに啜る嗚咽に 瞬が優奈に目をやると、わずかに残った夕日に反射して目元がきらりと光った 「…川野、泣いてんの?」 「…」 何も答えずぼーっと前だけを見ている優奈は、 いつも天然炸裂で、教室で他の女子たちとキャーキャー騒いでる姿と違いすぎて なんだか見ていられなくなった瞬は視線を前方に戻し、 ボソリと呟いた 「…俺、フラれた」 そんな瞬の告白にびっくりして今度は優奈が顔を向ける 膝を抱き、体育座りで小さく丸まって、ボーっと前を見ている瞬の姿は、 優奈のもっていた、いつもクラスのムードメーカーで明るく元気なイメージとはかけ離れていて 「…あたしも」 本来打ち明けるはずのなかった事実をぼそりと呟いてみれば 驚いて優奈を見る瞬と目が合った
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加