1人が本棚に入れています
本棚に追加
僕のこだわりの無いアパートは玄関を入るとすぐに居間になっている。
「今、着替えてくるからどっか座ってて」
僕がそう言うと、康太は頷き部屋の中を見て回る。
その様子を見て、着替えをするために隣の部屋に向かった。
普通なら、10年以上会っていない奴を残して違う部屋に行くなんて考えられないが、僕は気にしなかった。
理由は『康太』だから。
僕が部屋に戻ると康太は、鞄を下ろし、携帯を取り出している所だった。
「康太、何か飲む?」
「何かあるの?」
「麦茶か牛乳」
「じゃあ牛乳」
僕は、適当にコップを取ると地元の名前が入った牛乳を持っていく。
職場で大量に買わされた牛乳だ。
「たくさん飲んで」
「ありがとう…あれ?雅之も牛乳?苦手じゃなかったっけ?」
「変わったのさ。どうしても職場で飲まなきゃ行けない状況でさ」
「ふーん」
「あの頃から、変わってないって言うけど結構変わっただろ僕も」
さっき康太が言った『変わってない』と言う言葉。
10年以上も会っていないのだ。
『変わってない』訳がない。
「『変わってない』よ。雅之は」
康太は続ける。
「ここの傷は、今でも『変わってない』」
そう言って康太は僕の胸の辺りを指した。
最初のコメントを投稿しよう!