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「もーホラ、ちょっと下向いて」
凛は俺のYシャツを引っ張って下を向くよう促す。
俺は涙を拭かないまま、目線が同じになるように少し屈んだ。
すると、
――ちゅっ。
俺の唇に凛の唇が触れた。
「ええぇぇぇ!?」
俺は驚きの余り凛を突き飛ばしてしまった。
だって、凛からなんて初めてだし!
「あ、止まった」
「へ?」
「な・み・だ!止まったね」
そう言った、いたずらに笑う凛の顔が太陽の光にあたって、とても輝いて見えたのは、俺の目がまだ潤んでいたからなのかな。
「ねぇ、和人」
凛は俺の手を握りながら言う。
「留学の事、止めないでくれてありがとね。和人に我慢ばっかさせると思うけど、私…」
「俺ばっかじゃないでしょ?」
「え?」
「凛もでしょ?」
俺が凛の手を握り返して言うと、凛はまた眉を八の字にして顔を背けた。
「うるさいなー」
凛は口を尖らせて言ったが、そんな凛が可愛くて、ぷっと笑ってしまった。
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