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「心は何処にあるの?」
女の子は向かいにいる男の子に問いかける。
そこは森のような場所だった。
男の子は女の子に答える。
「わからない」
と。
“心”は胸にあるのかもしれないし頭にあるのかもしれない。
心臓や脳がそうなのかもしれない。
もしくは、目には見えないものなのかもしれない。
そもそも、“心”なんていうものはただの思い込みで本当は存在しないのかもしれない。
だから、男の子は答えた。
まだ小さい頭で子供なりに考えたうえで答えたのだ。
「わからないの?つまんない」
女の子は男の子の答えが不満なようだった。
「じゃあ、君は何処にあると思うの?」
男の子は逆に女の子に聞き返す。
「私?私はね、心は……」
そこまで聞いたときだった。急に景色が歪み、少女は消えた。
――――――――――――――
「ッ!?」
少年は飛び起きた。
上がっている息を整える。
しばらくして落ち着いた少年は窓の外を見る。
外はまだ暗い。
夜明け前といったところだろうか。
暗い窓の外を見ながら少年は、
「また、あの夢か……」
そう呟いた。
この少年がこれから始まる物語の主人公である。
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