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「さ、邪魔したね。
暗くなって来たし 女の子がいつまでも 一人で黄昏てると 危ないよ。」
そう言って 彼はゆっくり立ち上がった。
私は そこで初めて 彼の方へ視線を向けた。
フイにドキリ、とした。
さっきまで 大学時代の彼を思い返していたのに 案外図々しい 自分の体内細胞の反応を 恨めしく思った。
長めの前髪の間から見え隠れするフレームなしの眼鏡。
眼鏡の奥には長い睫毛と少し垂れ目の優しげな瞳。
スッとした鼻筋と微笑みをたたえた薄い口角が上がった唇。
…目が合って 頬が熱くなるのがわかった。
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