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戸惑い
何日か過ぎて週末―――いつものように、友人の紅未子(くみこ)と会っていた。
「で、まだ 大地クンを引きずってるワケ?」
「―――っ・・・。」
いきなり来たか。
「もうさぁ・・・いい加減前向いていかないと。
彼だって あと一年大学だし
卒業したら地元に戻るんでしょ?
莉緒だって地元に戻って来たんだし 静岡と大阪の遠恋じゃ、
ま、今言っても…だけど きっとこれから大変だったんじゃないの?
親元離れての親密交際って 青春の一頁にして 前進まないと!」
――わかってますよ。
頭では理解しているつもりなだけに、改めて言葉にされるとツラい。
わかってるんだけどなぁ。
紅未子はいつも痛いところを突いてくる。
辛いことや嫌なことがあると何時までも引きずりがちなあたしを
多少の荒療治で 立ち直らせてくれる有難い友人なんだけど・・・
今回は そうそう直ぐには立ち直れないのに―――
だって、別れた彼―――
大地は 大学時代のかけがえのない眩しい三年間を一緒に過ごした大切な人だったから。
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