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静かな蒼い空の下で、風に乗って、
リンゴー…ン
リン…ゴーン
という音が どこからか聴こえる。
そういえば、1度だけ。
今から5年前。
俺が15歳の時、1度だけ どこかの教会の前で偶然茜と会った事がある。
向こうは 友達と楽しそうに喋ってて、俺に気付かなかった。
…だけど。
俺はすぐに気付いた。
昔から変わらない澄んだ瞳。
猫のようにしなやかな動き。
そして、花よりも可憐な笑顔。
白いワンピースを着た、妖精と見間違える程かわいらしい彼女は昔のまま。
…変わらない。
彼女が通り過ぎた後、俺は立ち止まった。
歩けなかった。
彼女を久しぶりに見た衝撃と喜びがあまりにも強すぎて、歩くことができなかった。
……そして、一粒だけ。
澄んだ空を映した涙が頬を伝った。
…今思えば、会った場所が教会の前だったという事は、偶然じゃなかった気がする。
運命的な何かが働いてたような気がする。
…本当はどうなのか なんて、俺にはわからないけど。
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