一章~始まり~

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俺は完全に目を瞑り 冬の風邪を全身で感じていた。 外と雪特有の、独特な匂いに思わず 深く息を吸うと、喉が痛み咳き込む 「…ゴホっ、うぇ… やべえ…本格的に風邪、引いた…;」 咳き込むと同時に、足までふら付いてきた自分に半ば呆れながら再び 家へと向かうため歩き出す事にした、がしかし その足取りは思った以上に重たく、辛い… 中々、前へと上手く進まないし、進んだ気もしない ―まずい、これはまずい。 直感でそう思い、不意に 『誰かに向かいに来て貰おうか…』と、思った…が。 不運にも、昼休みの時にケータイの電源を切らしていた事を思い出し、それは叶わぬ願いだと気づく。 では、どうするか… 正直なところ 歩くのはかなりキツイ。いや無理だ。 なんせ目的地である自分の家は10分やそこ等で着く距離ではない。 男の俺でさへ、普通に歩いても1時間はかかる そんな距離をこんな体調で…しかも、歩いて帰るなんてー… 無理だ。 そう思った瞬間、俺はガックリと肩を落とす。 これから自分がする事を理解したからだ それはー… 「バスに…乗るっきゃないよな…;」 そう、バスに乗ることだ。 まあ…普通に考えて 徒歩一時間の距離ならバス乗って通勤、通学をする事は当然だろう…が、俺は違う。 俺はバスが嫌いだ、大嫌いだ。 理由は簡単、酔うから。 無論、他の乗り物では酔わない、なのに何故かバスだけは酔ってしまう。 だから成るべく、バスに乗る事は愚か見る事すら避けていたのだが…(出来れば今も乗りたくはない、見たくもない!;) しかし、そうは言ってられない。 ケータイが切れてるので連絡なんて取れないし 今のこのご時勢、公衆電話なんて物もない。 とうの昔に取り外されている。 どちらにせよ今日の事は俺の不注意からおきたこと ならば、残る選択はただ一つ…もうここは、腹をくくるしかない。 「乗る…か…。」 自分で言っておきながらだが、すごく荷が重い。 溜息ですら重く感じるのだから重症だ…だが、仕方ない。 仕方ないのだ。 俺は自分にそう言い聞かせ 重たい足を無理やり歩かせて 此処から一番近いとされている、丘の上にあるバス停目指し歩くことにした… どうかそれまで…俺の体力が持ちますように…;
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