5人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は完全に目を瞑り
冬の風邪を全身で感じていた。
外と雪特有の、独特な匂いに思わず
深く息を吸うと、喉が痛み咳き込む
「…ゴホっ、うぇ…
やべえ…本格的に風邪、引いた…;」
咳き込むと同時に、足までふら付いてきた自分に半ば呆れながら再び
家へと向かうため歩き出す事にした、がしかし
その足取りは思った以上に重たく、辛い…
中々、前へと上手く進まないし、進んだ気もしない
―まずい、これはまずい。
直感でそう思い、不意に
『誰かに向かいに来て貰おうか…』と、思った…が。
不運にも、昼休みの時にケータイの電源を切らしていた事を思い出し、それは叶わぬ願いだと気づく。
では、どうするか…
正直なところ
歩くのはかなりキツイ。いや無理だ。
なんせ目的地である自分の家は10分やそこ等で着く距離ではない。
男の俺でさへ、普通に歩いても1時間はかかる
そんな距離をこんな体調で…しかも、歩いて帰るなんてー…
無理だ。
そう思った瞬間、俺はガックリと肩を落とす。
これから自分がする事を理解したからだ
それはー…
「バスに…乗るっきゃないよな…;」
そう、バスに乗ることだ。
まあ…普通に考えて
徒歩一時間の距離ならバス乗って通勤、通学をする事は当然だろう…が、俺は違う。
俺はバスが嫌いだ、大嫌いだ。
理由は簡単、酔うから。
無論、他の乗り物では酔わない、なのに何故かバスだけは酔ってしまう。
だから成るべく、バスに乗る事は愚か見る事すら避けていたのだが…(出来れば今も乗りたくはない、見たくもない!;)
しかし、そうは言ってられない。
ケータイが切れてるので連絡なんて取れないし
今のこのご時勢、公衆電話なんて物もない。
とうの昔に取り外されている。
どちらにせよ今日の事は俺の不注意からおきたこと
ならば、残る選択はただ一つ…もうここは、腹をくくるしかない。
「乗る…か…。」
自分で言っておきながらだが、すごく荷が重い。
溜息ですら重く感じるのだから重症だ…だが、仕方ない。
仕方ないのだ。
俺は自分にそう言い聞かせ
重たい足を無理やり歩かせて
此処から一番近いとされている、丘の上にあるバス停目指し歩くことにした…
どうかそれまで…俺の体力が持ちますように…;
最初のコメントを投稿しよう!