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「ふぁあ~………」
なんとも気の抜けた欠伸とともに15歳の少年、“八神透夜(やがみとうや)”は階段を降りていく。と、リビングからはみそ汁のようないい匂いがした
しかし、そのことに若干まゆを潜める透夜。その理由はいたって明快
いまこの家には自分と妹と母しかいないはずなのだ。しかし母はいまの時期、朝が一番忙しいため、朝食などほとんど作れない。そして、妹はもとから料理など作れない。自分はここにいるから朝食は作れない
以上の点からこの“朝食のいい匂い”というものは本来ありえないはずなのだ
が、リビングに入るとその謎はあっさり解決した
「あっ、おはよう、透夜♪」
「んっ、おう………」
そこには隣家の幼なじみ、同い年の“神無月 やよい”の姿があった。世話好きおせっかいというまさに理想的な幼なじみスキルをもつ彼女は最近料理の腕を向上させたらしく、母が本当に忙しい時はときどきこうして朝食を作りにくるようになっていた
その献身的な彼女に対し全くもの好きなやつだな。という感想しか抱かない透夜はテーブルにぐたーと腰掛けた
「母さんは?」
「おば様はもうとっくに仕事にでたけど?というか、なんで私が知ってて息子の透夜くんは知らないんですかね~?それって変だと思うんだけど~?」
「ちがいねぇ」
透夜は皮肉っぽく笑う
「あっ、朝ご飯できてるよ」
「悪いないつも」
「それは言わない約束でしょおとっつあん!」
「……………ずっ(←みそ汁をすする)」
「もう!乗りが悪いな!」
「味が薄い………」
「う゛っ!ほんと?」
「まぁ、ギリギリ合格点か。次からはもう少し濃いめで頼むよ」
「りょっ了解」
とまぁ、まるで夫婦のようなそんなやり取りをしたあと透夜は自分の座っているテーブルのちょうど反対側を指差して
「そこにあるリモコンでテレビつけてくれ~」
といった。するとやよいは
「ご飯の間はテレビは禁止!」
と、頬を少し膨らませて返す
「お前は俺の母さんか。つか、ここは俺んちなんだから決定権はこちらにあると思うんだがな~」
「う゛。………もう仕方ないな」
しぶしぶといった表情でやよいはリモコンでテレビの電源をいれた。
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