No.Ⅰ

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透夜とやよいは二人して通学路を歩いていた。会話はない。が、透夜の隣では 「♪」 楽しそうに鼻歌を歌う少女がいた。そしてその少女はときどきぴたりと鼻歌を止めると透夜の方を見てくる。そして、しばらくすると再び鼻歌を再開するのだ。 いったい何のつもりなのか?怪訝に思いつつも放っておくと後々面倒になることから理由を尋ねる透夜 「あ~………なんだ?なんでそんなご機嫌なんですか?」 するとくるりと一回転してから 「んふふ。さてどうしてでしょう?」 とやよいは返した 「……………」 「あ~!めんどくさいとかいま思ったでしょう!」 「思ってねぇ」 「うそだよ!透夜はそう思うもん」 「………めんどくせぇ」 透夜はそうつぶやいて足を速めた 「ああ!いう!いまいうから置いてかないで!」 やよいは置いてかれまいとその後をついていく。それから 「ほら、見てみて?」 と自分を指差した 「………何を?」 「もう制服だよ。どう、かな?」 「どう?………なにが?」 「だから、………似合ってるとか似合ってるとか似合ってるとかそういうこと!」 「ああ、そう言うことか」 つまりやよいは『制服が似合っている』といってほしいらしい。なるほど。それらを理解した上で透夜はいった 「似合ってねぇ」 「う゛っ!」 やよいは胸を押さえて呻いた 「そう………なのかな?」 「ああ、全然似合ってねぇ。なんか制服を着ているというよりも制服に着られてるって感じだな」 「が~ん!」 その言葉にやよいは深く深く沈んだ。先ほどまでとはうって変わり目は死んだ魚のようになってしまっている。足取りも重い 「ば~か。冗談だよ」 「えっ?」 めんどくさそうに頭をがしがしすると透夜は 「割と似合ってるぞ。なんか女子高生みたいに見えるぞ」 といった。これから女子高生になる女の子に女子高生みたいに見えるというのは果たしてほめ言葉なのか? 「ほんと!」 「ああ」 「えへへ!」 しかし当のやよい本人は非常に嬉しかったらしくそれはもう目を輝かせた 「(ったく、人のいうことに一喜一憂して、………騒がしいやつだな)」 透夜がそんな事を考えている隣では 「♪」 また鼻歌混じりのご機嫌なやよいがいた。それからは特に会話もないまま鼻歌だけが二人の間にあるのであった
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