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片付ける以前にそこら辺に巣食うガラス共の良い餌になるだろう。
ゆっくりと彼は立ち上がり、ひとつ背伸びをする。
彼の名は如月 神威(きさらぎ かむい)。
裏世界で暗躍する一端の抹殺屋だ。
一端なんて言っているが、実は超一流の暗殺者として名高い人物でもある。
別名『紅い瞳の暗殺者』とも呼ばれていて今や全世界を震撼させつつある凶悪殺人犯だ。
彼は家系の都合で自分が国連から狙われている者の『混ざりモノ』ということは自覚している。
何せ魔術に対しても特別に耐性が高く、並大抵の魔術程度では彼を殺せないし、まったくもって無意味。
身体能力は人間の限界を超え、もうあり得ない領域にまで達している。
天井や壁を這い、物凄い速さで移動する彼の動きはまさに巣に掛かった獲物を狙う蜘蛛のよう。
同業者からみればまさに芸術的だろう。
幼い頃からの訓練のお陰で、体を動かすことが困難な態勢からでも獣のような速さで移動する術を身に付けているからだ。
まあそのことは本人にとってどうでもいいらしい。
彼に狙われて生き残った人間は、今現在一人も居ないと言われている。
「今日の四人目は良かったな……後でもう一度試してみよう……」
今日のオマケである警備員の四人目。
彼の動きを読んで豪快に飛び掛かったのは良いが、あの紅い大剣で風の如く素早く四肢を斬り落とされ、バラバラ死体になった可哀想な結末の男である。
いつも急所を狙い、即死を狙っていた彼にとって、それは初めて解体した獲物だったからだ。
あの感覚を忘れないようにと、自分の脳みそに深く刻む。
そのまま寂れた大通りに出て、道路沿いを一人で歩く。
頭を垂れる街頭が細々とアスファルトを照らす。
つらまん……誰も居ないから……。
だから夜は嫌いなんだよ。
路地に曲がる角に差し掛かった時、突然その角から何かが飛び出てくる。
どんっ!!
咄嗟に反応が出来なかった神威はそれにぶつかり、思いきり尻餅を着く。
こんな時にいつも通りの機敏な反応が出来ないなんて思ってもいなかった。
「いってぇ……なんだ?新手の奇襲か?」
「イタタタ……」
「ぬおっ!?」
思わぬ場所から声が聞こえ、いつもの仏頂面から一変、間抜けな表情を浮かべ、情けない奇声を上げる神威。
その後、あまりの恥ずかしさに顔を隠すように伏せる。
なんと神威にぶつかったのは身長140㎝ぐらいの小柄の少女だった。
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