朧月

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薄手の白いワンピースに小さなサンダル。 しかし胸は溢れんばかりに膨らみ、体のラインはやけに生々しい。 どうやらこうやら十代後半と推測することが出来る。 所々から微かに見える肌にかなり大きな切り傷が見えている。 白いワンピースは赤い斑点が点々と滲んでいた。 見るからに何かから逃げている様子だ。 ふと神威は気に掛けたが相手は赤の他人。 助けるつもりも無ければ、話す義理も無いのは当然。 神威はゆっくりと立ち上がると、何もなかったように歩き去った。 十歩進んだぐらいの時、路地の方向から大男が二人、ぬうっと姿を現した。 体に大きな刺青を入れた厳つい大男達。 こんなのに追われてちゃあ、小さな体のあの子が逃げるのも当然だな。 内心、一人で納得する。 「逃げんなよガキが!!こっちはてめえに振り回されて頭に来てんだ!!ぶっ殺されたく無ければ黙って付いてきあがれ!!」 大男のドスの効いた声が、静寂な夜を突き破る。 この状況、普通の女の子ならビビって泣きわめくはず。 しかし、驚いたことに彼女は堂々と首を横に振った。 敵わないのは見ての通り。 だけど彼女は自分の意思を貫き通した。 大男の怒りが爆発したのは当然だった。 木の幹のような太い腕を突き出し、その大きな手で彼女の首を掴み上げる。 あまりの苦しさに彼女は喚き、足を宙で泳がせる。 その時、他人事のような冷たい視線で一部始終を眺めていた俺は、無意識のうちにその大男に歩み寄り話しかけていた。 「なぁお兄さん方?そんな小さな体の女の子にムキに成りすぎじゃないかい?」 「ん?誰だてめえは?」 「見ての通り、ただの通行人さ。」 「関係無い奴はすっこんでろ!!今、この手でろくに使えねぇ生意気な下等の"混ざりモノ"のガキを始末するだ!!外野は黙ってそこで見てろよな!!」 ピクッ……。 俺は混ざりモノと聞いて過剰に反応した。 真紅の瞳は怒りでさらに深い紅に染まり、ゆっくりと左手はメクリウスの柄を握る。 怒った理由は下等と言われたことに対してじゃない。 仮にでも同じ人間として、彼女を真っ当に見ていなかったことに対してだった。 いつの間にか真紅の剣は抜き放たれて、大男の幹のような太い腕を斬り落とした。 血飛沫が華のように舞い、大男の腕は彼女と一緒に地面に叩き落ちた。 大男はその激痛に耐えるように悶え、アスファルトの上を転がり回る。
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