二十三. 戦いの果てに・・・

5/5
前へ
/166ページ
次へ
  ゴメン・・・・ そう思った時だった。 真っ暗だった目の前が急に明るくなる。 ここは、前に見たことがある。 寝たきりの少女を送るときに訪れた・・・   三途の川・・ きらきらと光り輝く水面にたたずむ女の人の影・・ こちらを向いている。 見覚えがある。 「お母さん」・・ ああ、これから母さんの所へ行くのか・・ 「ヒロシ・・  大きくなったね」 「お母さん・・」 一歩、二歩・・母に向かって歩き出そうとしたとき、二つの光が母の脇に立つ 「おにいちゃん」 女の子と、お父さんだ。ああ、無事だったんだな・・ 良かった。 二人揃って笑っている。 その時である・・・ 僕の横にキラキラ光った塊が近づいてくる・・。 彼女だ・・ 光り輝いて分かりづらくはなっているけれど、雰囲気でわかる。  「ミナ・・」 「やっと思い出してくれたんだね~」 「ごめん、オレ、気づいてあげられなかった」 「ううん、いいんだよ。一緒にいられただけで幸せだったよ」 「でも、これからは一緒だね」 「ううん、ヒロちゃんは、まだやることがあるよ・・」 「へ?」 彼女の意外な返事に戸惑う僕。 「これから、働いて、結婚して、子供を育てていくんだよ」 「一緒に行けないの?」 彼女が少し悲しげな顔になる・・ 母のほうを向いて確かめようとした。 母はこちらを向いて微かな笑みを浮かべている。 「お母さんはずっと見守っていますよ・・」 「お母さん・・   ミナ・・」 その時、まばゆい光が二人を覆い、僕の意識は後方へと向かい出す・・・ 手を出して母達を追おうとしても、どんどん遠ざかっていく・・ 微笑みながら僕をやさしく見つめる彼女達・・・ 「母さん!  ミナ――――!」 二人を取り囲む光がいっそう強くなり、十一面観音の姿が浮かび上がる・・ 「南無・観世音菩薩様・・」 光に包まれながら、僕の意識が飛んでいった・・
/166ページ

最初のコメントを投稿しよう!

816人が本棚に入れています
本棚に追加