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ゴメン・・・・
そう思った時だった。
真っ暗だった目の前が急に明るくなる。
ここは、前に見たことがある。
寝たきりの少女を送るときに訪れた・・・
三途の川・・
きらきらと光り輝く水面にたたずむ女の人の影・・
こちらを向いている。
見覚えがある。
「お母さん」・・
ああ、これから母さんの所へ行くのか・・
「ヒロシ・・
大きくなったね」
「お母さん・・」
一歩、二歩・・母に向かって歩き出そうとしたとき、二つの光が母の脇に立つ
「おにいちゃん」
女の子と、お父さんだ。ああ、無事だったんだな・・
良かった。
二人揃って笑っている。
その時である・・・
僕の横にキラキラ光った塊が近づいてくる・・。
彼女だ・・
光り輝いて分かりづらくはなっているけれど、雰囲気でわかる。
「ミナ・・」
「やっと思い出してくれたんだね~」
「ごめん、オレ、気づいてあげられなかった」
「ううん、いいんだよ。一緒にいられただけで幸せだったよ」
「でも、これからは一緒だね」
「ううん、ヒロちゃんは、まだやることがあるよ・・」
「へ?」
彼女の意外な返事に戸惑う僕。
「これから、働いて、結婚して、子供を育てていくんだよ」
「一緒に行けないの?」
彼女が少し悲しげな顔になる・・
母のほうを向いて確かめようとした。
母はこちらを向いて微かな笑みを浮かべている。
「お母さんはずっと見守っていますよ・・」
「お母さん・・
ミナ・・」
その時、まばゆい光が二人を覆い、僕の意識は後方へと向かい出す・・・
手を出して母達を追おうとしても、どんどん遠ざかっていく・・
微笑みながら僕をやさしく見つめる彼女達・・・
「母さん!
ミナ――――!」
二人を取り囲む光がいっそう強くなり、十一面観音の姿が浮かび上がる・・
「南無・観世音菩薩様・・」
光に包まれながら、僕の意識が飛んでいった・・
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