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4年の歳月であろうと月や星は変わらず、西の大陸、ナダレス国を照らしている。
多くのビルやマンションが所狭しと立ち並ぶナダレス国は、所謂(いわゆる)先進国だ。
多くのビルの中で一番高いそれの屋上に、ツンツンとはねた金髪の青年が一人、柵に腰かけていた。
残っている面影から彼は親友へ復讐を誓い黒の派閥に入った男、クルス・ラザヴォードだと容易に推測出来る。
4年前とは変わり、かつてのアイズと同じ全身真っ黒なローブを纏(まと)い、右手首に黒い文字で【Ⅶ】と刻まれた赤い腕輪をしている。
そして何よりも変わったのは瞳。
かつての温かさが感じられた藍色の瞳は絶対零度の様に冷たくなっていた。
闇の組織、【黒の派閥】に身を落とし早4年、今や第Ⅶ隊隊長という地位にまで昇格した彼は様々な任務をこなし、この日も任務でナダレス国に来ていた。
意味もなく星空を見上げていると、唐突に左耳の白いイヤホンから聞こえてくる女性の声。
『ユウリです。只今着きました。隊長何処にいらっしゃいますか?』
「……ここら辺で一番高いビルの屋上だ。」
『分かりました。すぐ向かいます』
どうやら通話先は彼の部下の者のようだ。
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