派閥最強の男

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青龍が標的を影の様な黒いシルエットに切り換え、得意の炎を吐き出す 盛大な炎はシルエット男や、地上にいる者達の視界を遮(さえぎ)るには十分過ぎる程に大きく、今度は熱風が彼に吹き付け、次にその根源となる炎自体が迫ってくる 第五手・白檻により周囲を覆われたクルスと、抗争に集中するポルトとクリティバの三人を除く全員が、そのド派手な景色に目を奪われていた 豪快な音が次第に小さくなると、それに伴い炎も同じ末路を歩み男の姿が見えてきた 余りにも地上からは距離が離れていており、尚且つ逆光の為に彼が誰なのか、そして安否はどうなのかを全員が目を細め見守る 直ぐにその細めた両目を見開く事となるのだが…… なんと驚くべき事にシルエット男は何事もなかったのように立ち尽くしていたのだった 顔も、露出した肌も、この真っ昼間に不釣り合いな制服も、三ツ又の矛も火傷どころか全て無傷 逆光の為、これを知る者は誰もまだいない 辺りには小さいが風の音が確かに聴こえる そして彼は矛を静かに降り下ろすと、青龍は耳をつんざく様な鳴き声を発し、羽の動きを止め、重力に引っ張られ落下した よく見るといたる所に真新しい傷があり、血もいたる所から滴り、林檎の様に赤い小雨が真下に降り注ぐ そしてそれに呼応するように彼は急落下し始めた 徐々に彼のシルエットは姿を表す
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