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「俺より先に……ルーナを……」
「じっとしていて下さい。ヴィラ隊長。貴方の方が重症なんですから」
透き通るような高音の優しい声、天使の様な笑顔で促されるとヴィラは言い返す事が出来なくなった
雷霆により貫かれた2つの風穴を見てみると、初期段階から比べて半分ぐらいに収縮している
血もいつの間にか止まっている
荒かった呼吸も少しずつ整えられていく
無数にあるような戦場痕、魔獣・白銀狼の亡骸、口を覆いたくなるような鮮血の塊、そのどれにも似合わぬ和の雰囲気を持つ女史はまるで荒野に咲く一輪の花のようだ
女史の能力は回復能力
数多の能力者を有する黒の派閥の中でも彼女しか持っていない唯一無二の能力だ
ある者は天授十器と同等の力と讚美(さんび)し、ある者は神の力と崇(あが)めるそれは、黒の派閥の頂点に君臨する者達・元老帥(げんろうすい)からも一目置かれ、重宝されている
気が付くとヴィラの風穴は塞がっていた
表情にも普段の見る者に温もりを感じさせるような穏やかさが戻りつつある
大まかな治療を終えるとラプラはルーナの元へ駆け寄り、ナイフで刺された箇所に光のベールに包まれた手をそっと添えた
傷口を触られた事により一瞬表情を歪めるが、直ぐに温かみのある光によりそれは戻り、ルーナは掠(かす)れた声で言った
「あり……がとう……ござい……ます。ラプラ……隊長」
「お気になさらず。もう大丈夫です。リラックスして下さい。良く頑張りましたルーナ副隊長」
ヴィラに掛けた高音の声、見せた屈託のない笑顔に癒されると、ルーナは安堵しその重たい瞼(まぶた)をそっと閉じた
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