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重い沈黙が包むエレベーターの中、ヴィラが総隊長ベレンに話し掛けた
「ベレン総隊長。クルスの件なのですが……」
「何だ?」
「今後アイズの情報が入ったとしてもあいつには教えない方がいいのではないでしょうか?
今回は天鳥が人語を話せる魔獣で、尚且つあなた方が近くで任務があったから助太刀に来れましたが、もし遠くにいたら俺達は全滅でした」
「それが何だと言うんだ?」
相変わらずの抑揚の無い声でベレンは先を促す
「クルスはアイズに対して盲目です。アイズへの復讐で今回、俺たちは完全に蚊帳(かや)の外でした。もしラプラ隊長がいなかったら俺やルーナは間違いなく死んでいました。仲間の安全を考えられるようになるまでアイズとの接触は避けるべきではないでしょうか?」
ヴィラは暑く語った
全てはクルスの為、仲間の為
しかし、それは直ぐに否定される事となる
「あいつはアイズへの復讐のためなら何でもやる男だ。今回の敗北は壁を認識させた。だからこそあいつは努力する。そしてそれは派閥の利益に直結する。何も接触を禁止する必要など無い」
「っ……」
ヴィラは何も言い返せなかった
クルスがアイズへの復讐のみで生きているなら、ベレンは派閥の為だけに生きている男
良心や同情、気遣いや優しさは存在しない
気付くとエレベーターは彼らの寝室のある階に止まっていた
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