未完のパズル

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自尊心の高い一族といってもそうではない者もいた その者の名はデセアド デセアド・ノア・ディエス。 ノアの名は王位を持つ者に与えられるミドルネームだ。 日焼けを知らない肌はは透明感を醸(かも)し出し、対照的な黒い髪は飾り気も無く、ただ旋毛(つむじ)の向きに従って生えている まだ成人にすらなっていない彼は想像もつかない程大人で、平和主義で、己の力に過信する一族を嫌っていた そしてそれと同時にアルヴィネス一族の創造魔法の力に大変興味を示していたのである 彼は息がつまるような一族を、家族を捨て故郷であるディエス王国を単身後にする 部屋に閉じ籠り勉強や習い事の毎日、己の意思すら持てない度を超えた過保護の外には見たことの無い建物、景色、乗り物、その全てが新鮮で好奇心旺盛な彼にはまさに毎日が希望に満ち溢れた人生 決して王国時代の金を湯水の様に使う贅沢三昧な日々とは違うが、庶民的な彼にはそんな人生など要らない 彼はこの時初めて自由を手に入れたのだ そしてデセアドは月日を経てアルヴィネス王国にたどり着く 始めに視線を奪われたのは美しい純白に包まれた城 赤みがかった夕刻の太陽がそれを照らしており、まるで世界遺産のようだ 全体を不気味な黒を基調とし、殺伐とした重い空気が流れていたかつての家とはまるで違う 息を飲む程壮大で、目視している自分が温かい気持ちになるような優雅な城 彼は直感で気付いた あの城に王族がいる。と そしてそこを目指して暫くコンクリートの上を歩くと、市場に出た
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