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明け方。
朝日が優しく照らし、鳥が心地よく鳴いている時、公園に一人の少女が犬の散歩をしていた。
犬はこの静かな空気の中元気に鳴いており、どこか眠そうな少女は犬に引っ張られていた。
これじゃどっちが散歩をしているのか分かったもんじゃない。
桃色の髪をボブにした少女は犬の赴くままに引っ張られると、その先に一人の少年が寝ているのを発見し、恐る恐る近づいてみると少年はとても気持ち良さげな表情で寝息をたてていた。
――……綺麗な顔。
中性的な童顔の少年に彼女の頬は少し赤みを帯び始め、犬の散歩そっちのけで凝視していると、眉を寄せ薄く瞼を開け始める少年。
朝日に眩しく照らされた少年は視界に入った少女に若干焦りながら声をかける。
「ん、……ん。……あ、あの……君は?」
「え、あっ……そのごめんなさい。つい見とれちゃって。……って何言ってんだろ私」
少年デセアドの突然の目覚めにまごつく少女は、手を頬にあてテンパり始めた為、デセアドの頭には疑問符が浮かぶばかり。
やがて、少しづつ落ち着きを取り戻した少女はやっとまともに事を言い始めた。
「あの……その……ここで何されてるんですか?」
「……家出してね。それで野宿してたんだ」
「家出って、お家は何処なんですか?両親心配してますよ」
最初の質問には答えたデセアドだったが、『お家』、『両親』という単語を聞いた途端、表情を曇らせた。
恐らくディエス一族の高圧的な態度をアルヴィネス王国の人々は不快に思っているだろう。
王国に住んでいた自分も忌み嫌っていたのだから……。
だからこそデセアドは詳細を話す訳にはいかなかったのだ。
詳しくは分からないが、何か訳ありの事情を察した少女は話を逸らすべく名前を名乗り握手を求めた。
「私はフリアン。貴方は?」
「僕はデセ……デセス。宜しく」
二人は優しく握手を交わした。
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