307人が本棚に入れています
本棚に追加
「家に帰らないなら家に泊まらないですか?」
突然の提案にデセアドは戸惑い始めた。
誘いは確かに有り難い。今晩も恐らく野宿だろうと決心していた彼にとっては願ったり叶ったりだ。
しかし、誘いを受けるわけにはいかない。
まだ、名前しか知らない関係の……いや、深い関係だろうとも人様に迷惑をかける訳にはいかない。
止めどなく溢れたものを理性で制したデセアドは申し訳なさそうにお断りした。
「ごめん。誘いは有り難いんだけど、ご家族に迷惑かける訳にはいかないので……」
「そっか。普通そうだよね。じゃあ、今晩も此処に泊まるんですか?」
「うん。多分そうなると思う」
「そっか。じゃあまたね」
これ以上続きそうに無い会話の後、散歩を再開すべく手を振りながら立ち去っていくフリアン。
彼女の姿が美しい公園から見えなくなると、デセアドは大きく背伸びをし、朝日に慣れた目を大きく見開き、立ち上がる。
――今日はあのお城に行こう。
少年は背筋を伸ばし幸せそうに歩き始めた。
最初のコメントを投稿しよう!