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――近くで見てみるとなんて綺麗なんだ。
柵越しに首が痛くなる程顔を上げた先には、朝日に照らされ、悠然と聳え立つ純白の城。
名をオルノス城。
それは夕刻の見た時とはまた別の意味で美しく、デセアドは二度目の息を飲む。
そしてもう一度……。
今度は目を輝かせながら息を飲む。
その行為は雄大な城に圧倒されたからではなく、緊張の表れ。
これからの未来を決めるのだ。
緊張して当たり前。
意を決した少年は柵の両脇にいる門番の一人に丁重な態度で話し掛けたが、回答は厳しいものだった。
「あの、僕魔法を教わりたいのですが、国王様に会う事は出来ますか?」
「悪いが国王様もお忙しい身だ。予約も無しに会わせる訳にはいかない」
その応対は当たり前と言えば当たり前だった。
市場の焼き鳥屋のおっちゃんの様にはいかない。
彼はこの国で最も尊ばれるお方の命を預かっているようなものなのだ。
しかし、デセアドも食い下がる。
「お願いします」と深々と頭を下げる態度は真摯そのもの。
その態度からも彼の人柄の良さを感じる。
だが、門番も同じく己の責務の重要性をしっかりと自覚をしている為に、意見を変える訳にはいかない。
あまりしつこいと追い出そうと腹に決めた矢先……
黒い柵の向こう側から渋味の効いた低い声が聞こえてきた。
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