未完のパズル

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「何事だ?」 黒と白の入り交じった髪をびっしりとオールバックにし、丸眼鏡を掛けた男が此方へやって来ると、羽織っている衣や容姿を見た途端、デセアドは大きく目を見開いた。 もう一人のそれと共にが敬礼をしながら状況を説明する門番。 「おはようございます国王様。この子供が魔法を教わりたいと言うのですが如何(いかが)なさいますか?」 この国王はアルヴィネス王国最大の魔法学校の校長も兼任している。 本来ならばあり得ない事なのだが、国王が民の声を直に聞きたいが為に無理を言って兼任させて貰っているのだ。 その情報は勿論、デセアドの耳にも入っているため彼はこのオルノス城へと参ったのだ。 突然の入学希望者に顎に手を当て、思案顔をしていた国王は少年に歩みより、口を開く。 「無理じゃな。正規ルートじゃなく、態々(わざわざ)此処に来たのもおおよその見当が付く。悪いが君だけを優遇するわけにはいかない」 聡明な国王はデセアドの金額面の問題を察しとり、強い眼差しで入学希望者を拒んだ。 その説得力にたじろぐデセアドはしゅんとし、その場を後にする。 背中からは哀愁が漂い、彼がどれほど魔法を学びたかったのかが窺える。 その背中を見届けた後、国王もその場を後にし、門番も自分の定位置に戻り始めた。
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