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美しい太陽が照らす中、デセアドはとぼとぼとコンクリートを歩いていた。
切なさを帯びた黒い瞳はコンクリートを向いており、焦点が定まっていない。
左右には木造の一軒家が所狭しと並んでいる。
――お金稼がなきゃ。
無茶な要望を一蹴された今、残っているのは正規のルートしか残っておらず、暫く重い頭を回転させていると不意に顔を上げる。
――そうだ!彼処(あそこ)の焼き鳥屋募集してないかな?
活路を見出だした少年は早速走りながら例の焼き鳥屋へ向かい風のように颯爽と走り出す。
此処は市場。
多くの人々がそれぞれの制服を着て開店準備に取り掛かっていた。
魚介類、野菜、肉などまるで無数に感じるような臭いが空間を埋め尽くしていた。
その中を急いで駆ける少年の姿が一つ。
伸びては動く。この動作を無数にリフレインする影は、とある所でまるでテレビの電源をOFFにするように停止した。
その先にはお世話になった焼き鳥屋のおっちゃんと、恐らく妻であろう女性が着々と準備を進めている。
肩で息をする少年に気付いたおっちゃんは、昨日と同じくニカッと笑い陽気な声を掛けてきた。
「おっ!昨日の坊主じゃねぇか。今度は゛買い゛に来たのか?」
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