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翌日の6時10分前。
まだ太陽がうっすらとしか光を放ってないが、昨日に続き朗らかな天気になりそうな予感を胸にデセアドは畳の上にいた。
八畳程のそこには木造の机、箪笥(たんす)、アナログ型のテレビがあり、少し古ぼけた印象を受ける空間だ。
目前に立て掛けられた全身鏡は、ボタンを閉めるデセアドの姿を映し出している。
「よし、終わり」
やがて着替えを終えた童顔の少年の格好は、頭には捩り鉢巻き、白い法被のような上半身に黒いズボン、そして黒い靴という豪華な貴族服とは真逆な格好だ。
「似合ってんじゃねぇかデセス」
見るからに嬉しそうに言うおっちゃんはデセアドの肩を叩く。
「頑張ってねデセス君」
祝福の一言に母親も続く。
そしてもう一人……。
「頑張って下さい。デセスさん。私も休みの日には手伝いますので」
白にピンクの水玉が入ったフリアンの姿が……。
「うん。まさかこんな形で再開するとはね。」
驚く事にフリアンはおっちゃん達の只一人の子供だったのだ。
これには最初はデセアドも大変驚き、呆然と立ち尽くすばかりであった。
言われてみればピンクの髪型やデセアドと同じ童顔なところ等、幾つか母親と共通点があるが気付くのは流石に無理がある。
そして時刻は開店準備に取り掛かる6時を迎えた。
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