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おっちゃんを一言で説明するなら正に゛おおらかな男゛がぴったりだろう。
いきなりのバイト志望、詳細も知らぬ少年を招き入れた事、そして挙げ句の果てには無賃での衣食住。
まるで全てを包み込むような器の大きさにデセアドは涙を堪えるのに精一杯だった。
同時に本名を偽る自分に腹立たしさを感じる少年は、その汚名を返上すべく一生懸命働いた。
結果は自ずと付いてきて、いつの間にか焼き鳥屋にとって無くてはならない存在になり、三ヶ月が過ぎる。
仕事内容も体が覚えるまでに一人前に成長したデセアドはフリアンに一つ頼み事をした。
それは魔法を教えてくれという内容だった。
いくらアルバイトで金を稼ごうが限界がある。
魔法学校は入学金と授業料として莫大な金額がかかる事で有名だ。
共に働き、食事をし、一つ屋根の下で過ごしてきたデセアドにとっては二人分の授業料を払う余裕が無いことは火を見るより明らか。
しかし、自分がここへ来た本分を忘れる事が出来なかった。
デセアドは最後の我が儘として「魔法を教えて下さい」と頭を下げたが、フリアンは笑顔で了承する。
おっちゃんやおばさんの器の大きさは確りと子に受け継がれていたようだ。
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